MMOにおける役割(職業・クラス)の均一化について書いてみようと思う。
昨今のMMOで見掛ける事が多くなった”明確に差別化”がされていない役割(職業・クラス)システム。
「全クラスアタッカーであり専門のヒーラークラスは存在しない」と言ったようなものを挿している。
勿論そういったシステムを採用していてもそれぞれのクラス間で範囲攻撃が得意だったり遠距離攻撃がメインだったりという差別化は理解している。
ヒーラーやバッファー・デバッファーなどの役割が決められており基本的にその役割以外のことは出来ないと言っても過言ではない、昔ながらの明確な差別化がされているシステムとの比較・考察のお話。
この話はレベル制のMMOを前提として話を進めていく。
スキル制のMMOにも、ある明確な役割を持ったキャラクター作成というものが存在するが今回は置いておく。
まず私が明確な差別化がされているシステムが好きかそうでないシステムが好きかと聞かれると、双方の長所短所を理解した上で明確な差別化がされているシステムが好みだ。
しかしこの二つの中で大きな好き嫌いの差があるかというと全然そんなことはない。
遊びやすさという点では色々な場面に適応できたり、必須能力がない明確な差別化がされていないシステムのほうが遥かに上だと思う。
まずはこの遊びやすさという観点から話をしていきたいと思う。
■遊びやすさの追求
MMO黎明期の金字塔『EverQuest』はガチガチの差別化がされていたタイトルである。
タンク・アタッカー・ヒーラー・クラウドコントローラーなどの役割が与えられており基本的にそれ以外のことは殆どできないクラスばかりだ。
EverQuestでもそれぞれの役割の中で差別化は存在していたが基本的にタンクはタンク枠であり、ヒーラーはヒーラー枠だった。
この差別化により必須クラスであるタンクやヒーラーが確保できない場合の行動の制限やソロプレイでの狩り性能に大きな差が生まれた。
必須クラスを確保するためパーティー募集を3時間近く続け、やっと確保できたと思ったら別の必須クラスが落ちてしまい移動中に解散となるような悪夢はポピュラーな事例だと思う。
また基本的に役割に特化しているのでモンスターを倒す性能が著しく低いクラスがいたのも事実であり、レベリングは常にパーティーに入る事が前提となるようなクラスもあった。
必須クラスを確保するためのパーティー募集はRvRゲームの走りの1つである『Dark Age of Camelot』などでも存在したし、最近では『Final Fantasy 14』も同じである。
この明確な差別化がされたシステムはプレイヤーに大なり小なりストレスを与え、心優しい必須クラスプレイヤーは自分が抜けたらパーティーメンバーが困るという思いから無理を強いてしまう事となった。
遊びやすさという点ではレベル制でクラスシステムを採用している『World of Warcraft』は当時感動するような内容だった。
パーティー性能・ソロ性能どちらもこなせるようクラスを設計し特性で色づけを出来るようにした。
カジュアルプレイヤーの取り込みを宣言していたので大きなストレスを感じることなくそれぞれが好きなクラスで遊ぶことができる内容だった。
しかしこれだけ革新的だと感じてもカンスト後の突き詰めたパーティー構成となればクラス縛りは存在し根本的な解決には至らなかった。
その後遊びやすさを追及する上で出てきたのが役割が均一化されたシステムを採用するMMO達である。
中でもあらゆる面で最先端であり、ある意味MMOの完成形だと個人的に思うのが『Guild Wars 2』である。
クラスは全員アタッカーであり、PvEに関して言えば効率を求めない限りどんなパーティー構成でも遊べる内容になっている。
■それぞれの長所と短所
ここからはそれぞれのシステムの長所と短所について。
まず明確に差別化されてるシステムは上記でも書いた通りプレイヤーの行動に制限を設けたり負担を強いる場面が多々存在する。
現在のゲームの流れとしてカジュアルというキーワードをよく目にする。
カジュアルの足かせになるのが行動・時間の制限である。
伝統のクラスシステムを採用するゲームでは自分が選んだクラスによって役割を制限される。
自分が好きなクラスでは競争が激しいので渋々別のクラスをやらなければならないこともあるかもしれない。
その点役割が均一化されたシステムはある程度の融通が利く。
パーティーを募集するにしても頭数を揃えればいいのであれば簡単である。
突き詰めれば色々な制約も出てくるだろうがカジュアルに遊ぶのであればこんなに気楽なことはないだろう。
では役割が均一化されたシステムで不満な点だが、どうしても戦闘が単調になってしまう。
様々なギミックで忙しくキャラを動かさないといけないとしてもそれぞれアタッカーなので行き着く先はどれだけダメージを出せるかになる。
効率を求めるとなると一番ダメージが出せるクラスという制限が加わってしまったりもする。
大きな誤解を生むかもしれないが、役割が均一化されたシステムでのパーティープレイはソロプレイ時の動きの延長線上としか感じないことがある。
パーティーを組んでダンジョンへ行こうとも、それぞれが干渉し合うような能力をあまり持っていないのでソロプレイと同じ動きをすることになる。
勿論この干渉能力が大きすぎると必須クラスに直結してしまう。
なのでカジュアルに遊ぶためにはあるべき姿のデザインだと思うがどうしても物足りなく感じる。
明確な差別化がされているシステムでは一人一人は単調な操作をしていたとしてもそれぞれ違った形で干渉し合い連携し、パーティーで戦っていると思わせてくれるところが楽しいところであり醍醐味だと思う。
また事実上切り捨てられたヒーラーなどの各種特化した能力を持った役割達を好きでやっていた人達の受け皿がないことになる。
ヒーラーなどがいない前提で作られたシステムだと雀の涙程の回復が出来るクラスがあったとしても基本は必要なく、その分攻撃に特化したクラスのほうが重宝されたりする。
その雀の涙程の回復でも必要になれば必須クラスになってしまうのだから難しい。
■不自由とコミュニケーション
最後に不自由だからこそ発生するコミュニケーションについて。
そもそもクラスデザインの話よりも前の問題でカンストまでは基本的にソロ前提のカジュアルな作りについての話も含まれる。
例えば同じ狩場で遊んでいたソロプレイヤー同士が声を掛け合いパーティーを組んで狩りをしたり。
仲間が死んでしまい蘇生できる人を探したり、トラベル魔法が使える人に目的地まで運んで貰ったり。
自分が持っていない役割を他人に依存することが少なくなったMMOであまり出会わなくなった光景である。
私の遊び方が変わってしまったのも要因のひとつだと思う。
ストレスフリーなゲームに慣れ、時間の制約もあり不自由なゲームはなかなか受け入れられないかもしれない。
それでもダンジョンの最深部から自分の死体を召喚してもらった時の感動は今でも忘れられない。
そんな体験を経て大きな青い芝を生やして別のクラスを触るのも楽しいものだと思う。